増田ひろのり

活動レポート: 視察や研修

7/31 結・しぶや「貧困の課題にどう向き合うか?生活相談・支援の現場から学ぶ、声がけのポイント・支援のはじめ方」

2024.8.12

7月31日(水)。結・しぶや(渋谷区地域共生サポートセンター)の講演・交流会「貧困の課題にどう向き合うか?生活相談・支援の現場から学ぶ、声がけのポイント・支援のはじめ方」に出席。

自立支援活動で大きな実績を挙げられている、認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの加藤事務局長による講演と、グループワーク、質疑が行われました。
もやいさんは、ホームレスや生活に困窮した方の生活支援、生活保護申請の支援などをされている団体です。

開催趣旨は結・しぶやの開催告知記事を、当日の様子は今日の”結”の記事をお読みください。

もやいさんの職員数は12名で、年間4,000件(対面1,000件、電話やチャット3,000件)の相談に対応されているそうです。その活動を支えるのは登録者400名のボランティア。うち定期的に活動できているのは80名、研修を経て実際に生活相談業務を担っているのは約10名。
どうやってボランティアを確保しているのか、またボランティアの方々の参加動機や報酬が気になりましたが、福祉職の退職者が多いとのことでした。

今日一番驚いたのは、もやいに相談に来る方のうちの7割は、その前に行政窓口で公的支援を断られた人であり、同じ人がもやいと一緒に行政窓口へ行くと、ほぼ100%申請が通り、95%は公的支援を受けられる、という事実でした。

(以下、質疑応答の内容。増田のメモから起こしているので発言の抜粋になります)
Q もやいに相談に来る人は、行政窓口には行かないのか?
A 以前調査したことがあるが、相談に来た人の7割が、行政へ公的制度の相談をしたことがある人だった。 そこで支援制度に繋がれなかった、窓口で嫌なことを言われた、そういう人がもやいに相談に来る。行政職員が話を聞き慣れていなかったり、制度を理解していないことも原因だと思う。
Q(増田) その7割の人のうち、もやいに相談に来てから、公的制度を利用できるようになった人はどのくらいるか?
A 申請はほぼ100%通る。決定は95%くらい。残りの5%は借金返済中の人や収入があるのにネットカフェに滞在している人。その場合は法律家へ繋ぐ。

専門家が同行すればほぼ100%通る申請が、本人のみだと窓口で撥ねられてしまう状況は異常です。
役所の職員のスキル不足なども原因として挙げられると思いますが、役所のいわゆる水際作戦が機能しているものと改めて感じました。水際作戦については、今年になっても新しい事例が後を断ちません。
3/14 東京新聞「生活保護「水際作戦」は桐生市だけじゃなかった…関係者が明かした「申請書を渡さない」手口の実態

水際作戦が止まない理由は、不正受給防止の側面もあると思いますが、そもそも生活保護の受給基準を満たす方すべてに支給できる予算が確保されていないという、行財政上の矛盾が根本としてあると考えます(日本では人口の1.6%しか生活保護を利用しておらず、先進諸外国よりもかなり低い利用率です。 しかも、生活保護を利用する資格のある人のうち現に利用している人の割合(捕捉率)は2割程度にすぎません。 =日弁連パンフ)。生活保護制度を含め、貧困状態にある方の生存権をどう見做してどう保証していくかが、この国の政治に課せられた大きな課題です。

生活保護制度を含む、公的支援制度の利用は、わたしたちの権利です。
もやいでは、自分の生活状態に応じて受けられる公的支援制度を探せる支援検索ナビと、自分の状況を入力していくと生活保護申請書が自動的に作れる生活保護申請書作成システムを公開しています。
生活にお困りの方や、そのような方をご存知の方は、支援検索ナビなども使いながら、もやいさんなどの支援団体へ、または増田まで、ご相談ください。