増田ひろのり

活動レポート: 視察や研修

能登半島地震 視察とボランティアの記録(1)輪島市視察

2024.8.31

8月16日(金)から18日(日)まで、能登半島地震の被災地である石川県輪島市と七尾市へ、個人で行ってきました。訪問のきっかけは8月10日(土)の渋谷区の防災ボランティアプログラムでの会話で、今回が発災後はじめての訪問でした。

これまで中途半端に訪れたら迷惑になると思って躊躇っていましたが、訪問して現地の状況を一目見て、理解できたことが沢山ありました。
また3日の滞在を経て、復旧復興が進まない現状、その理由、復旧フェーズの支援体制構築のあり方、など考えるべきことを沢山持ち帰ってきました。


行程

8月16日(金)の正午に金沢駅着、午後はレンタカーで輪島市を視察。夜は金沢泊。
8月17日(土)18日(日)は七尾市中島町小牧の支援センターでボランティア。夜は金沢泊。ボランティアの受入れは、災害支援団体である一般社団法人四番隊さんにお世話になりました。


8/16(金)  輪島市訪問

・金沢市から輪島市への移動

金沢市から輪島市へは「のと里山海道」と「能越自動車道」で移動。7月17日に全線で対面通行が再開したばかりです。
しかし損壊部分を迂回させながら復旧させているので、上下左右に小刻みにうねった道に(北國新聞の写真が分かりやすい)。集中して運転しないといつ対向車線にはみ出してもおかしくない道路状況で、緊張しました。それでもこの復旧により被災地への移動時間が大幅に短縮しています。

・市街地に残ったままの、家屋や道路の損壊

輪島市街に入って、被災状況が目に入ってくるようになりました。地震から7か月経っても潰れた家屋や損壊した道路がそのままになっている景色がありました。
残った家や店では元通りの生活が営まれていながら、隣の建物は潰れ、倒れ、片付かずに残さている状況。市内全域でこれが日常と化してしまっている光景に衝撃を受けました。

※家屋損壊の写真は避け、道路損壊の写真のみ掲示

さらに驚いたのは、倒れた建物の屋根が歩道を超えて車道まではみ出しているのに今も撤去されていないこと。車道が規制されずに自動車が走行していること。レンタカーを運転しながら衝突の危険を感じました。歩行者は車道に出てそこを通過するしかなく、子どもや高齢者の安全も心配になりました。


・撤去が進まない理由

なぜ、がれきの撤去が進んでいないのか。帰京してからいろいろ読みましたが、以下の2記事が網羅的に書かれています。
7/5 NHK 「能登半島地震・半年 何が復興を妨げるのか 私たちはどんなことが支援できるのか」
5/31 産経「能登半島の倒壊家屋公費解体に立ちはだかる「壁」 所有権利者の同意、がれき処理も課題」

理由を順に書き出すと以下のようになります。特に(4)や(6)の解決は単純ではありません。
(1)水道の復旧、仮設住宅の建設、「朝市」の解体 などが優先されてきた
(2)撤去までの手続き(公費解体申請)が煩雑 =ルールの問題
(3)解体作業者不足 =人手の問題
(4)壊れた家の住人の気持ちの整理と、残った物の仕分け作業が必要
   =心の問題と人手の問題
(5)解体後のごみ処理能力 =予算と広域連携の問題
(6)復興に向けた地域の合意形成が並行して必要

ルールや予算や人手については政治の責任で速やかに解消すべき。一方で、心への寄り添いは、次回に書く「災害ケースマネジメント」というアプローチが有効そうです。
ちなみに、1/15時点で村井宮城県知事がこれらの複雑な状況を言い当てている記事を読み感服しました。

※一般住宅より先行している「朝市」の解体現場

・市役所へ

事前調整をせずに行ったので、職員の方とお話はせず、総合受付フロアだけ拝見してきました。災害復旧期の役所の入り口を拝見できただけでも有意義でした。

現地の方と

現地の方のお話を聴けたのは2箇所。

地元の酒屋さん。道路損壊の写真を撮った時に、向かいにお店があり、若いオーナーとお話ししました。正月という1年で一番高額な在庫を抱えている時期に被災し、在庫が全て損壊。そこからお店を再建されています。
「被災当初は観光客に写真を撮られるのを嫌がる人も多かったが、今は現状を見に来て伝えてほしい」と仰いました。目黒区の中目黒の花見の時期に、能登半島支援として販売される日本酒を卸したとのこと。これから私たちも地域のお祭りなどでご支援できればと思いました。
偶然のご縁を大切にしたい。オンラインストアをご紹介しますので、皆様もぜひ能登のお酒をご購入ください。

輪島市を発つ前に夕食をいただこうと、観光協会サイトを見て立ち寄った割烹居酒屋さん。カウンターで常連さんのお話を伺いながら、「ボランティアに来てくれたんだからサービスだ」と地魚を味わわせていただきました。
市内のお店が営業再開できる場所を早く建て直さないと、みんな諦めてどんどん市を離れてしまう。輪島塗りの職人は自宅が仕事場だったから、家を建て直せないと伝統工芸に影響が出る。などの危機感を伺いました。


渋谷区では何を学び何を備えるか

渋谷区では、都心南部直下地震(M7.3)の想定で、家屋被害が全壊1,311 棟、半壊3,418棟、消失296棟と試算されています。

被害の予防や復旧に備えることが両方必要で、それらは渋谷区地域防災計画に記されています。しかし壊れた建物の撤去の進め方(公費解体申請)などは災害状況によって対応が変わるため計画には明記されていません。これを迅速に進められるよう、能登半島地震で環境省により整理されたマニュアルを踏まえておきたいと思います。

また、被災した方の状況に寄り添いながらサポートする体制が必要です。これについては、次回の記事で詳しく書きます。
1日目の輪島市視察の記録は以上。2日目は七尾市でボランティア活動に入ります。

能登半島地震 視察とボランティアの記録(2)七尾市小牧ボランティア へ。