増田ひろのり

活動レポート: 議会の報告

【R6-3定_本】一般質問を聴いて

2024.9.27

渋谷区議会第3回定例会では開会直後の9/17から3日間で12人の議員が一般質問に立ちました。今回は私の出番はありませんでした。多岐にわたる分野の質問がありましたが、その中から以下5つのテーマについて紹介し私の意見を書きたいと思います。

1.豪雨・水害対策
2.障がい者福祉・自立支援
3.本町・水道道路・幡ヶ谷社会教育館
4.緑化・グリーンインフラ
5.官民共創事業の説明責任と透明性確保



1.豪雨・水害対策

6月29日、7月6日、8月22日。この夏も渋谷区で毎月冠水が発生しました。
これを踏まえ4会派の代表質問と矢野議員の個人質問で水害対策が問われました。以下が区の答弁まとめです。
・水害ハザードマップを更新し分かりやすくする
・防災用品のあっせんに土嚢や水嚢を追加する
・自宅が浸水してしまった場合の消毒器具の貸し出しを検討する
・雨水浸透施設など総合的な豪雨対策を進める(都の助成制度を活用する)
・車の水没が絶えない代々木3丁目のアンダーパスに、新しい案内標識と検知器を設置する(バルーン式遮断機の新設は今後の研究課題)

渋谷区では水災対策は土木部、震災対策と防災アプリの運用は危機管理対策部と、所管が分かれています。2部門がしっかり連携し区民に必要な情報や物資を届けられるよう、働きかけていきます。

2.障がい者福祉・自立支援

・一般質問前の区長発言で、渋谷区社会福祉協議会(各種相談、お金の貸付、民生・児童委員や区内の施設、事業者の支援や連携の場)と渋谷区社会福祉事業団(区内の高齢者施設、障がい者施設、こども園保育園を運営)を、統合していく方針が示されました。自民の代表質問でその方針が問われ、区は、お互いの強みを活かして重層的な福祉体制を築くために、既存事業を検証し、民間活用や他の団体の協力を得ながら3年ほどかけて統合していくと答弁がありました。
・来年3月の本町幼稚園閉園後に障害者施設が造られますが、ここでは日中一時支援や放課後等デイサービスなど、当事者やご家族にニーズの高い預かりサービス、居場所につながるサービスが提供される方向に。2026年度開設。
・水道道路の都営住宅の27棟がこれから建て替えられます。ここに障がい者や高齢者のためのグループホームなど福祉施設を組み入れる働きかけを、区からしていく方向に。

本町・幡ヶ谷周辺に障がい者の住居や居場所が充実し、障がいがある方もない方も住みやすい地域になることは私の願いです。社協と事業団の統合はスリム化ではなく、区内の団体や専門職を巻き込んだ体制拡充につながっていくよう、促していきます。

3.本町・水道道路・幡ヶ谷社会教育館

・(「2.障がい者福祉・自立支援」に書いたとおり)本町幼稚園跡地の障がい者施設の運営や、水道道路の都営住宅に福祉施設観点を取り入れる方針が示されました。
・都営住宅建て替えを含めた「水道道路まちづくり」はこれまで区主体のワークショップが行われてきましたが、これから東京都や民間事業者を巻き込んで一体的なまちづくりをしていく。
・幡ヶ谷社会教育館の建て替え中の代替施設について、必要性を含めて検討する。
・当会派の代表質問(佐々木議員)から、笹塚幡ヶ谷初台本町地区の緑被率の低さ(9.8%)が指摘されましたが、区は「満足度は他地域より高い」との答弁。

今年3月に「水道道路沿道エリアまちづくりビジョン」が公開され、先日7/31には意見交換会も行われました。様々な長期ビジョンが示されていますが、まずは幡ヶ谷社会教育館利用者のニーズ、障がいがある方やご家族のニーズをしっかり伺い、コミュニティ機能の充実と共に社会教育機能が失われない施設配置のあり方を考えたいと思います。

4.緑化・グリーンインフラ

当会派の代表質問で、佐々木ゆき議員が時間を割いて質問しました。
過去記事「藤井名誉教授『温暖化と街路樹・緑道』セミナーを受講」にも書いたとおり、ヒートアイランド対策には「樹冠被覆率」という指標で緑化を進める必要があります。低木や草などで緑化を進めるのではなく、大きな樹で木陰のある街を作った方が良いという考えです。
渋谷区で今年制定された「みどりの基本計画」では「緑被率」「緑視率」という指標が使われていますが、佐々木議員は「樹冠被覆率」または「樹木被覆地率」を緑化の指標にすべきと訴えました。
区長答弁は、これまでどおり、壁面緑化や屋上緑化を含めた「緑被率」「緑視率」を向上させるというものでした。

「樹冠被覆率」を上げようとすると高木を植える土地も必要になるため一筋縄では進められません。「緑被率」「緑視率」は狭い場所や建物の屋上、壁を含めて稼ぐことができますので、商業地や住宅地でも比較的達成しやすいのは事実です。本区では「みどりの基本計画」を制定したばかりで方針転換のハードルは高いかもしれません。
しかし豪雨災害をもたらすヒードアイランド現象を緩和するためにも、「樹冠被覆率」「樹木被覆地率」を意識した緑化政策が必要だと考えます。今後長期的に都市で木陰を作る政策に取り組んでいきたいと思います。

一方、9/12に都内で倒木による死者が発生した事故から、3会派が既存の樹木の診断と管理を訴えました。区長は順次実施すると答弁しました。

5.官民連携事業の説明責任と透明性確保

渋谷区では多くの官民連携事業が行われていますが、行政の外側で行われているため、意思決定プロセスや成果が区民の目に見えないことが課題になっています。2月の第1回定例会では当会派の小田幹事長が代表質問で取り上げ、事務事業評価を行うべきだと訴えました。

今回、
・自民の代表質問で、複数の官民連携事業で機能やテーマが重複しているので整理統合して分かりやすくすべきだとの問いがあり、区長は統合だけでなく仕組みづくりも含めて検討するとの方針を示しました。また「目的は共通して区民のQOLの向上」だと明言しました。
・改革の代表質問では、(1)区が外部との交渉中が不利になるため非公開とされている情報について、不利になっても区民へ開示する効果の方が大きいから開示すべきという主張、(2)民間企業の秘密保護のために非公開とされている情報について、非公開のままではその根拠が分からないままなので将来どこかで開示する制度を整えるべきという主張がされました。区長からは「理解を得られるよう丁寧な周知を図っていく」との答弁だけで、問いへの正面からの答えはありませんでした。

両会派とも良い問題提起でしたし、「目的は共通して区民のQOLの向上」との答弁が聴けたのはよかったです。私が重要だと考えるのは、その「区民のQOL」の具体化、目標設定と成果の可視化です。ロジックモデルパーパスモデルといった手法を使って、いつ頃の、誰の、どんな暮らしを実現するために、企業と連携しているのか、企業はどんなリターンのためにそれを行うのか、などを区民に明示しながら進める必要があります。
私は渋谷区が官民連携を推進すること自体は評価していますが、それは公共のためでなければならず、何が公共のためなのかは多様な層の区民から評価されなければなりません。面倒臭がらず、手間やコストをかけてでも、官民連携事業の情報開示と評価について取り組んでいく必要があります。渋谷区だからこそその先例となる取り組みができるはずです。