増田ひろのり

活動レポート: 視察や研修

能登半島地震 視察とボランティアの記録(2)七尾市小牧ボランティア

2024.8.31

能登半島地震 視察とボランティアの記録(1)輪島市視察 から続く

能登半島のボランティア事情
被災直後の「ボランティア控え」報道のイメージが強く残った影響で、能登半島地震のボランティアは過去の災害に比べて圧倒的に少ないといわれています。各自治体の災害ボランティアセンターも、ニーズ収束のため規模を縮小した所もあると聞いています。

しかし、能登半島で被災した家屋の解体・撤去はこれからが本番。その前に家財道具とごみの仕分けや持ち運びが必要で、人手はいくらあっても足りない状況です。


ボランティアに関心がある方は
現在(8/30)、行政が域外からのボランティアを受け付けているのは珠洲市、能登町、輪島市、穴水町、志賀町の5市町。金沢市に集合しバスで送迎する枠が募集されています。定員が少ないためすぐに満員になりますが、現地で交通手段のない個人の方はこちらから登録ください
またもし、上記以外でボランティアへ行きたいという想いの方がいましたら、増田へご相談ください。



七尾市中島町小牧の「被災地NGO協働センター」
私は今回、しぶやボランティアセンターから紹介いただいた、七尾市中島町小牧にある「被災地NGO協働センター」で活動しました。

ここは行政ではなく、神戸市の災害支援団体が入って運営しているセンターで、住民の方のニーズ調査、ボランティア作業、炊き出し、コミュニティづくりのイベントなどが行なわれています。
ここに複数の団体や個人のボランティアが集まり、日ごとにチームを組んで、支援活動を行います。私が訪れた2日間は関西などから来た学生が中心となって活動されていて、とても頼もしさを感じました。


神戸市の運営団体は、2007年の能登半島地震の際にこの地域で災害支援をしてから、毎年のお祭りなどで交流を続けていたそうです。そのような縁が、今年の地震直後に行政を介さず直接支援に入り、長期的にセンターの運営を続けている状況に繋がっています。
被災時に他地域からの支援を受けるためには、日頃からの関係づくりが重要だと感じました。

長期の支援となると、運営団体のスタッフは手弁当というわけには行きません。人件費や運営費は、日本財団などからの助成金から賄われているとのこと。また、支援団体への直接の寄付も貴重な活動資金となります。



8/17(土) 七尾市ボランティア1日目
輪島市視察の翌日。7:30 金沢駅前発。
しぶやボランティアセンターから紹介いただいた、一般社団法人 四番隊さんの車に載せていただき、七尾市のセンターへ。9:30着。

午前は家財道具の運び出し
午前は、元自衛官の方や、減災復興政策専攻の大学院生と同じチーム。移動の車中で、家屋の撤去がなかなか進まない状況について、東日本大震災の時の対応と比較して話しました。自治体の中に元自衛官がいると、自衛隊の中のことが分かるから非常時に様々な要請がしやすいという話も。渋谷区では危機管理部で、元自衛官のキャリアを持つ任期付き職員が活躍されています。

支援先の家屋は築100年。立派な家屋ですが危険判定されたため、公費解体を選択されました。歴史ある家を解体する決断をされるまでには大きな葛藤があったと思いますし、なかなか家財の搬出をする気持ちにもなれなかっただろうと察します。

家主の方とボランティアで力を合わせて、重いタンスやピアノを運び出しました。全てを運び終わった後、「これで前を向ける、皆さんが来てくれて背中を押してもらえた」と仰ったのが印象的でした。
私は災害ボランティアは、急に災害に襲われ立ち尽くすしかなかった被災者の方と一緒に作業をすることで、気持ちを前へ進めるお手伝いをする役割も担っているものと考えています。

午後はごみの分別と運び出し
午後は、七尾湾に面するお宅のごみ分別と運び出し。
午前のお宅もそうですが、震災で被害を受けた家は歴史のある家屋が多く、解体撤去して建て替えるまで、住人の方の心の整理も兼ねた長い道のりになります。このお宅はリノベーションによる改修も検討されたそうですが、見積が高額だったため、解体と新築を選択されたそうです。
お子さんが小さな頃の記念の品など、何十年も前から残っていたものを、「ごみ」として廃棄の袋へ仕分けるお手伝いをしました。自分が当事者だったらなかなか手が動かなくなる作業だと思います。

依頼者の方が作業終了時に「よかったという気持ちと、寂しい気持ちと、半々」とつぶやかれたことが心に残っています。寄り添いながら、割り切る役割も持って、手を動かしながら背中を押す。そんな気持ちでお手伝いをしました。

帰りはまた、四番隊さんの車に乗せていただき金沢駅前のホテルへ。



8/18(日) 七尾市ボランティア2日目
この日も四番隊さんの車で7:30 金沢駅前発。9:30センター着。

午前は物置小屋のごみの分別と運び出し
依頼者の、ご高齢の女性とおしゃべりをしながら、ゆっくりと分別と運び出し。この地域の祭事で使われてきた物も残っており、確認しながら処分を進めました。

午後は家屋の瓦下ろし

初体験。瓦下ろし。解体することが決まった家屋の屋根の瓦を廃棄するため、1つ1つ外してトラックに積み込む作業です。地上から小さく見えても、いざ手に持つと瓦は大きくて重い。これを屋根の上から慎重かつスピーディーにリレーして積み込みます。支援団体に所属する大学生たちが屋根の上で躍動する姿に感銘を受けました。

2日間で4件の支援に参加させていただき、今日も四番隊さんの車で金沢駅前へ帰着。名残惜しくセンターを後にしました。



学び 〜渋谷区ではどう備えるか

災害復旧は長期戦。ごみの撤去は復興への一歩

今回私が訪れた七尾市にて、「災害ごみ仮置き場」の閉鎖を巡った混乱があったことをご存知でしょうか?
6/17 読売「能登地震、災害ごみ置き場閉鎖に被災者困惑…「避難中で作業間に合わない」」
8/2 毎日「災害廃棄物の仮置き場閉鎖「手続き不手際」 石川・七尾市が謝罪」

市は「利用者は減少傾向にある」として7月30日の仮置き場閉鎖を発表。しかも当日は急に締切時刻を繰り上げて受け入れを打ち切ったものです。しかし本記事でも書いてきたとおり、家屋の解体・撤去から発生するごみはこれから長期的に出てくるものです。

「ごみの撤去は復興への一歩」。おそらく当該自治体の予算や人手の制約もあっての苦渋の決断なのだと思いますが、県や国と連携して災害ごみを長期的に受け入れられる体制を築くべきです。

渋谷区では、地域防災計画(第20章)で、区立公園(代々木深町、はるのおがわ、恵比寿)や都の代々木公園をごみの仮置き場とする計画が書かれています。木密地域である区北部に計画がないことや、長期化すれば子どもが遊ぶスペースがなくなることが懸念されます。代々木公園は仮設住宅の設置も想定されます。今回の経験を基に、国や都や民間の遊休地を活用する調整なども提言していきたいと思います。

「受援力」を高める

受援力とは、助けを求めたり助けを受けたりするスキルのこと。地域に受援力がないと、いくら遠方のボランティアが助けに来ようとしても、受け入れが回らない状況になってしまいます。
渋谷区では区や渋谷区社会協議会のしぶやボランティアセンターが中心となって、地域の受援力を高めていく必要があります。

・被災地の受け入れ業務を経験する
一番経験値が高まるのは、被災地のボランティアセンター(以下ボラセン)の運営側に入って、受け入れ業務を経験すること。今回、しぶやボラセンの職員が、七尾市のボラセンへ協力に入って受け入れ業務を経験くださいました。このような動きは大変心強く、議員としてもどんどん後押ししたいです。

・域外への発信と、被災者の受援意識の啓発
能登半島でのボランティア不足の原因に、ボランティアの受け入れ態勢が整った時に強い発信をしなかったことと、被災者が遠慮がちになる心理を挙げる分析があります。事例から学び、いざというときの発信や啓発を準備しておくことが必要です。
4/1 石川テレビ「復旧が進まない…圧倒的にボランティア少なく『なぜ能登半島地震でボランティアの姿を見ないのか』」
渋谷区は逆に、ボランティア希望者がニーズを上回ることも想定され、その場合はどんなスキルのボランティアが必要かをタイムリーに発信する備えも必要になります。

・災害ケースマネジメントの体制構築
復旧期は、人手を集めて早く作業を進めることだけが良いわけではありません。
被災した方の状況や心に寄り添いながらサポートするため、士業やボランティア団体と連携して被災者個人を支える、災害ケースマネジメントという考え方が近年提唱されています。
渋谷区では今年、能登半島地震の教訓を踏まえ「受援応援計画」を新たに策定中です。この中に災害ケースマネジメントの考え方が取り入れられるか、チェックと提案をしていきたいと思います。

・多くの地域・災害支援団体とのつながり
小牧地区と神戸の団体との関係からも分かるように、非常時に最初に頼れるのは、平時から良好な関係が構築できていた団体や個人です。
渋谷区では他自治体との相互応援協定を結んでおり、今年は災害支援に資する100km〜200km圏の自治体との協定を進めています(8/1に石巻市と締結)。
区だけでなく学校、町会、商店街など様々な層で繋がりを持っているに越したことはなく、私も引き続き他地域の多くの団体と関係を築けるように活動したいと思います。


御礼

最後になりますが、現地との調整をしてくださった、しぶやボランティアセンターのセンター長、職員の皆様。2日間送迎を含めお世話になった一般社団法人四番隊の皆様。センターでお世話になった被災地NGO協働センターの皆様。一緒に活動したスタッフ、ボランティアの皆様。
全ての皆様へ感謝申し上げ、ご報告を終了します。ありがとうございました。